「壁の向こう側」

子供の成長に伴い、手狭になってきた住まいから奥様のご実家への引越しが改装のきっかけとなりました。敷地に面する道が狭いため、隣家との距離が近く密集した印象で、室内が暗く感じられました。また、１階と道路の高低差が大きく玄関には数段の階段がありました。建主からは、「耐震性、断熱性向上」、「祖母エリアのバリアフリー化」、「独立二世帯ではなく、距離感を選択できる環境」、「明るいガレージ」、「明るく開放的なキッチン」、「暗かった室内を明るく」という要望がありました。

そこで、まず窓の大きさ・位置・方位を工夫し、明るさ・温かさ・風通し等の環境改善を図りました。窓位置は道路を歩く人と室内の人の視線が交差しない高さとし、開放的かつプライバシーが守られた環境を獲得。そして、１階床下は断熱材充填することで冬場の底冷えをなくし、暖房補助として床暖房を導入。アプローチスペースを明るくするため、真上のバルコニーは半透明グレーチングに変更。更に、アプローチ全面スロープ化することで、玄関段差を無くし、完全バリアフリーを実現しています。奥が見切れるL型空間にすることで、面積以上の心理的な広がりと色々な居場所をつくり出しました。このL型空間は壁のような大引戸で分割も可能。このように使い方によって、様々な距離感を調整できる状況をつくりあげています。